11月12日-11月23日

いろんな気持ちが本当の気持ち
長嶋有のエッセイ集。長嶋さんの適度に洒脱で適度に泥臭い文章はエッセイでも健在。あと素敵なタイトルも。穂村弘に言及した章があったのだけど、云いえて妙な表現(その「良きもの」に、手続きなしで一気にたどり着きたいという「駄々」と「祈り」)があってぽんと膝を打った。ただあまりにぴったりで逆に既視感が。どこかで穂村自身かもしくは他の評者が書いていただろうか、どうにも心許ない。
遠まわりする雛
古典部シリーズの短編集。米澤さんの救いのないことに全力投球!な姿勢が好きだ。青春ミステリの旗手だなんて爽やかな代名詞、読者を騙しているようで座りが悪くないだろうか。←褒めてます。「手作りチョコレート事件」のほろ苦さには恐れ入りました。あと、まさか折木が千反田に惚れるとは!それでもなお、彼には省エネ主義で彼女の「気になります」を苦手として生きていって欲しいなと願っています。だってそれとこれとは別問題だからね!
インシテミル
面白く、最後の伏線回収の流れは鮮やか。ああ米澤はミステリ畑の人だった、と思い出させるには最適な作品。だが、少々内輪受けな感は否めない、メタ的というか。あと館物であることに少々抵抗が…。クロズドサークルのなかでも特に閉塞感がある館物は、推理小説がゲームであることをより露悪的に語るのが苦手だ、まさに今作のように。面白かったけど、でも。
  余談。題名って「淫してみる」だよな、と思っていたので終盤にこの記述が出たときにはガッツポーズしたが、よくよく見ると英題が「THE INCITE MILL」なのだった。
ぐるぐる猿と歌う鳥 (ミステリーランド)
ものすごく加納朋子らしい物語でした。「こっちはとっくにそのつもりでいたよ……五歳の頃からずっと。」の一文に思わず身悶え。ビルドゥングスロマン+日常の謎=ミステリランドという正統派な解答を読ませて頂きました、ごちそうさまです。