3月9日-4月16日

短歌の友人
穂村弘歌論集。やっと「棒立ちのポエジー」がどういったものなのかを理解できたのが収穫。
風が強く吹いている
最高でした。箱根最高。しをんさんですから非常に軽妙、素晴らしいエンタメ具合。「きみに対する思いを、『信じる』なんて言葉では言い表せない。信じる、信じないじゃない。ただ、きみなんだ。走、俺にとっての最高のランナーは、きみしかいない」九区を前にしての走とハイジのやりとりがクライマックスなんだな、と。この一文からしばらく読み進められなかった。走に100%シンクロして、腹の中があったかくなって、叫びだしたいような、そんな感じ。久々に「体感した!」と思えた読書。
きみはポラリス
恋愛小説短編集。まぁわりにオーソドックスな。もう「月魚」みたいなんは書かないのかな?と「永遠に〜」の二編を読んで思いました。(私あまり好きではなかったのだけど「月魚」)。(まぁもう完璧にエンタメ寄りの作家さんだものね)。以前他のアンソロでも読みましたが「骨片」が秀逸、「夜にあふれるもの」も良かった。
あなたの呼吸が止まるまで
完成度高いな、と。暴力、片親、女の子から女性へ。読み進めながらちらちらと既作がよぎる。だけどこれが一番練れてると感じた。島本さんの文章の仄暗い感じ・どこか強ばった感じに心惹かれる。このモチーフをもっと深めていって欲しい、どこまでも「一番練れてる」が更新されていけばいい。
赤×ピンク (角川文庫)
桜庭一樹の初期作品。想像していたよりもラノベ。少女を描いてきた彼女が初期にこういう似非少女を描いていたことは新鮮だった。
淋しいのはお前だけじゃな
文庫が出たので再読。相変わらず可読性が高くてきゅんとする文章。ただ、書体はnormalなほうが良かったな、単行本ならboldでも読みやすいけど文庫だとちと読みにくい、圧迫感がある。
モロッコ水晶の謎 (講談社文庫)
国名シリーズ文庫新刊。面白さはどれも安定していたけれどあえて云うなら「ABCキラー」。あと新キャラ因幡さんが登場。正直マスコミにバレていないとは思っておらず、あえて描かないんだろうと解釈していたので、今さらかよーという印象。まぁ人を冷たくあしらうアリスは珍しいのでこれからもちょくちょく出て嫌味云われればいいかと。
焦がれる愛のリミット (講談社X文庫ホワイトハート(BL)) [isbn
4062558688:title]:BL. プライスシリーズの番外編でツンデレ美人なお兄ちゃんとワイルドな従兄弟のあれこれ。パーフェクトに描かれていた兄・怜史が実はコンプレックスのかたまりだったのが、まぁ鉄板だな、と。すれ違いっぷりがハンパなくてほんとお前ら言葉が足らないよ!と思うこと幾たび。あとラヴシーンが濃いです。舌たらずになって喘いじゃう受って好みじゃないんだけど、怜史はとりあえずコトに及ぶ直前まで女王様なので、これはアリかも。
レベル7(セブン) (新潮文庫)
積読の山から。いやはや、すごい。スリリング!現在の宮部さんの文章からするとやや大味かなと思ったけれど、その分勢いがあってぐいぐい引き込まれた。逆転に次ぐ逆転、面白かった!
犬はどこだ (創元推理文庫)
文庫が出たので再読。結末を知っているのに、知っているからこそ、chapter6に進むのが辛い、震える。この後味の悪さクセになること請け合いだ。どうやらシリーズ化らしいのだけどこれから紺屋探偵は彼女の影を感じつつ探偵業を続けていくのか。それはそれでかなりいい。
クローバー
双子の生活あれこれ(主に恋愛方面)。全体的にラブコメチックで意外。こういうのも書くんだ、へぇ。細野さんと華子は「一千一秒の日々」の一紗と針谷を彷彿とさせるな(そういえば針谷も「名前と逆」みたいな描写があった気が・・・)。冬冶の最後の選択は逃避に近いんじゃないかなと思っていて、そこをもってして、モラトリアムから脱却とは、私はとれなかったけれど。
アンバサダーは夜に囁く (講談社X文庫―ホワイトハート)
BL. 舞台は国内の大使館で、大使×アルバイト。・・・ないだろそれは。と思いはしたが井村さんは仕事の描写がきっちりしている方なので、まぁあまり違和感なく読めました。キャンキャン吠える気の強い受も大好物。でもねー、大使がオヤジにしては若すぎるし、若さを売りにするには年をとりすぎで、ちと中途半端かも。あとこの人の話にでてくる女の人は典型的なBL界に都合の良い女でやっぱりちょっと悲しくなる。
本泥棒
このタイトルで舞台はヒトラー政権時のミュンヘンとくれば読まないわけにはいかないでしょう。語り手は死神、なかなか個性的な章立てで(最後まで慣れなかったけれど)新鮮さがあった。文字を覚えることから始まった少女が本の虜となり最終的には自ら書き始めるという成長と戦火を増す戦争が踏み荒らす破壊。死神は少し後に綴られる悲劇を事前に語るし、戦時下だし、場面場面の背景には暗さがいつもあるのだけれど、ひとつひとつのエピソードは喜びやスリルに溢れていてとても優しい。終盤のマックスとリーゼルのミュンヘン通りでの邂逅がしんと胸に響く。
むかつく二人
ラジオ番組の単行本化だそうです。序盤、ほんとに険悪な雰囲気を感じ取りびくびくしたけれど読み進めていくうちに(慣れたのか)気にならなくなりました。三谷さんの目立ちたいんだけど目立ちたくないというアンビバレンスがストレートにでてて面白かった。