一昨日の実体験

まず、犬が見えた。大きい賢そうな雑種。ヘッドライトのさきに行儀よく居る。その横に、足。ぎょっとして視線を上に移すと無表情でこちらを見ている初老の男性。通り過ぎて数秒後、恐怖はひたと背筋をのぼった。



友人と食事をした帰り道、23:30。国道を帰るのが面倒で住宅街をすり抜ける、ほそくうねった道を通った。冷え込んだその夜はもやがたちこめはじめていて、対向車も通らぬ道をそれなりに慎重に、だけど制限速度以上にとばして、私の白い軽は走る。

いくつめかのゆるやかなカーブの頂点にヘッドライトが差し込んだとき、見えたのだ。
まずは犬、ついで隣の初老の男性。彼らは車がきたから避けたという風情ではなく、体をしっかりと車道に向け、佇んでいた。

通り過ぎて数秒後、がつんと、恐怖。なにあれなにあれなにあれ。質感的に「生きているもの」だとは思ったが、それでもとにかく怖くて。進行方向にまた彼らが現れるんじゃないかと家に着くまで不安だった。


二日経った現在、とりあえず私に障りはない。

んまぁきっとちょうど車道を横切ろうとしてたんだとは思うんですけど時間状況どこをとっても怪しかったもので。大体あの寒いのにジャージ一枚で犬連れて散歩するか普通、という。まっさきに考えたのはこのおじさん犬連れて家出したのかな、でした。でも怖いから夜はあの道通らないことにします、しばらくは。