8月13日-9月6日

六月の夜と昼のあわいに
夢十夜」的小説集とのことで、いやーこれはものすごく好き。恩田さんの長編は盛り上げるだけ盛り上げて失速して終わるものが多いので多少のがっかり感を伴うのだけど、*1掌編にはそれがない。だって盛り上がるだけ盛り上がって終わるから恩田さんのすばらしい発想力を堪能できる。特に好きなのは「Y字路の事件」と「翳りゆく部屋」。どちらも記憶と時間をテーマにしているが、前者はちょっといい話で後者はねっとりしている。その匙加減がまたいい。
真夜中の裏切り (I novels),[isbn
4902543117:title]:BL.源氏物語がモチーフとのこと。うーん、設定はいまいちごっちゃだったけどな。あと2作目の後半が急に博多びいきになって笑った。(このばかちんがって地元民以外がいうのはアウトだと思うんだ正直)。初めて剛さんの作品を読んだけれど、大変BLらしいBLでした。
聖餐城
皆川博子のドイツ物、大好きです。結構厚かったので時間がとれずにいたのだけれど意を決して読破。すんばらしかった。これがもうすぐ80歳になる人の筆致だろうか。力強く美しくきらきらしている。主人公のアディは戦隊の雑用係から将校へと登り詰めるのだけど、そのためにあきらめなければいけない色々なことをあきらめられなくて、何度も立場を危うくしながら、結局物語の最後まで生き残る。それを影で支えるイシュアのアディに対する傲慢で皮肉じみた態度は、これはもう、切ないほどに友情以上で。隠遁すると告げたときにただ一度好意を告げる*2彼がたまらない。拡張分裂縮小を繰り返す中世ドイツの戦記物として、またアディの忠誠と恋情の物語として、そして異形のイシュアの自己確立の物語として、何粒にもおいしいお話でした。
トワイライト〈1〉 愛した人はヴァンパイア - [isbn
9784863325203:title]:吸血鬼ですよ!永遠の十七歳と何のとりえもない十七歳(出会い当時)のラブストーリーですよ!もうお前らそんだけベタベタしてて欲情しないわけ?!ってぐらいべったりなのに彼女を損ないたくないばかりに大人のキスにも進めないピュア(?)な二人ですよ!彼女目線で話が進むので地の文の八割は彼がいかにspecialかってことだけ。すんげー暑苦しいラブストーリーだけどきゅんきゅんしちゃうぜ。5巻現在、彼が不在のうちに狼男な幼馴染に言い寄られている彼女です。続き気になる。
同級生 (ノン・ノベル四六判)
初・東野圭吾。きれいにまとまっている読みやすいミステリ。どうも「アルキメデスは手を汚さない」がちらついちゃったけれど。

*1:あれだけ多いとやはり意図的なものなのだろうなーと思いつつ毎度律儀にがっかりする私

*2:そうして、お前への好意から、とイシュアは早口で言い添えた。ただこの一文のみ。この早口でってとこがまたいい。