4月12日-4月25日

横道世之介
多少夢見がちな平々凡々とした主人公と過ごした時間を各々が思い出す挿話。思い出は、人物は、かくも美化される。きらっきらの物語に少しの苦味を。そつがない、巧い。
この世は二人組ではできあがらない
私小説のような、小説家志望の女の子と彼氏の話。ダメでだらしのない(でもおそらく社会的には成功している)男性の描写が本当に巧い。書き続けることもデビューが決まることも彼氏と別れることもすべてはプロセス。せつないし読後感も良いとはいえない、でも読んでよかった。
レモンタルト
帯が扇情的なのはBL読者の目に留まることを意図してなのか、と最近の長野作品ではいつも思う。ここまで明け透けだと逆に爽快だが。本作はあやかし・記憶の混乱等の場面設定がなく(ただし暴力により意識は飛ぶ)、義兄の通俗的な推理が代わりを務めている。構成はいつもの長野節。ただ、ちょーっと、いやかなり、ご都合主義だ。このすべてを覆す続編を書いてくれそうな気もするが、期待しすぎか。
 余談。長野作品の主人公は自身の容姿について言及しないし登場人物もまた主人公の美醜には言及しないように思う。まぁこれだけモテモテで士が不細工だったらそれはそれでひくけども。
よくわかる作詞の教科書 (ゼロからすぐに身につく本)
確かに教科書。もう少し読み物的なものを期待していたので肩透かし。ふつーのことしか書いていないように思えたけれど、つまりそれ以上は感性と才能ってことかしら。