7月1日-10月7日

丸三ヶ月分、たった八冊。スマホって怖いね、快適なインターネット生活って怖いね。あと蔵書からの読了分が五冊あるけど、そのうち追記で。1029追記しました。

デカルコマニア
待ってました!のSF風味クロニクル。あーやばい、ここ最近の長野本で一番好き!おなじみの題材(時空・記憶・植物)を初期を思わせる風に調理しながらも、あくまでポップな軽やかな味付けに。『超少年』が近いかもしれない、ノリとしては。
 余談。最近出る本出る本、帯に「新境地」と書かれているのはどうしてなの長野さん。さして迷走している感はないと思われるのだが。
隅の風景
うわーい新刊!と開いたら紀行エッセイ集でした。飛行機が駄目で出来うる限りレールの旅、ただし移動中はビール飲んで寝る、という潔いポリシーに貫かれた旅路はオモシロイ。そこに目が行きますか恩田さん、と何度つっこんだことか。
SOSの猿
うん、伊坂。というほかない。現実の五十嵐真が吃驚するぐらいユングを引用しまくるほかは違和感のない伊坂ワールド。孫行者の体臭・口臭の描写などは瑣末だけどリアリティを立ち上げるために大変効果的。こういうところ、いつも思うけど、うまいなぁ。
 軽妙な書き口や脱力するような些細な伏線に目くらましされてはいるけれど、彼の小説って実はけっこう説教くさいというか、浪花節というか、う〜ん、暑苦しいというか。それが珍しく表に出てる話だな、と感じた。
パリで学んだ収納術 ?そろえる・並べる・重ねるたった3つの法則?
相変わらずの収納ベタなので。モノを減らすんじゃなくて、とにかく場所を決めてがっつり収納!(見苦しくない程度に)がコンセプト。見場はいいけど実用性としてはどうかなぁ、ぎちぎちすぎないか、と思ったけど、まぁ適度におしゃれ。
靴を売るシンデレラ (SUPER!YA)
たまにはヤングアダルト向けの明るい本を。主人公は靴を売る才能のある十五歳、離婚した父親はアルコール中毒で、私がなんとかしなくちゃ、って背負い込んでいる。負けん気の強いかっこいい女の子なんだけど、すごい健気でね。さわやかなお話だった。
黒い家
初・貴志祐介。この本がデビュー作なことすら知らなかった。前情報は、ホラー、のみ。そしたらまさかのサスペンスホラーで、こわいよ!ほんとにこわい。文章は硬いところがあるし、なんだかなぁ、な発言もちらほら。メタファーが強すぎる感もある。でも読後に感じるのは恐怖のみ!こわい!10代の頃に友人とクロックタワーをplayして震え上がった以来の恐怖。正直シザーマンより犯人のほうが怖い。
鬼のすべて
民俗学ミステリー、とのことで。うん、ああそう、うん。という感じ。謎解きにもキャラクタにも共感できず。
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)
お噂はかねがね、たまにはミリタリ物を。タイトルからしてグロかなと身構えたんだが、随分とセンシティブかつリリカルな。面白く読んだが、最後のたたみ具合はやっつけだなぁと感じた。だから左京賞逃すんだよっていう。
くじけな
枡野さんのツイッター詩集。簡素な装丁だが何気に表紙が凝っていて好き。内容はいつもの枡野さん。ツイッターは覘いていないので新鮮だった。心に留めた詩が三編あり、そのなかでも一番は「地球にや」。
八月六日上々天氣 (河出文庫)
文庫化したので再読。実に16年越しの文庫化、河出書房に感謝。当時は戦時中女子の軽やかさに多少の後ろめたさを持ちながら読んだ記憶があるが、再読で見方はがらりと変わった。軽やかさの影に押し殺したものはもちろんあり、その中で彼女は女の子から女性となり、女学生から妻となるのだ。静謐な原爆小説。
陰獣 江戸川乱歩ベストセレクション (4) (角川ホラー文庫)
「陰獣」と「蟲」、いやはやエグい組み合わせ。「陰獣」の一転意外な余韻を残すラストにはやられた。
蜘蛛男 江戸川乱歩ベストセレクション (8) (角川ホラー文庫)
明智と蜘蛛男との丁々発止の鍔迫り合い。大変面白かった。
コドモノクニ (河出文庫)
文庫化したので再読しようと積んでいた山から。長野さんを多分に反映させた(であろう)マボちゃんのお話。何度読んでもピッピの逃亡に切なくなる。もの音におどろいた拍子に窓から飛びだし、それきりだった。このそっけない一文が何度読んでも胸に迫るのだ。
眼鏡屋は夕ぐれのため―佐藤弓生歌集 (21世紀歌人シリーズ)
歌集。扉の眼鏡屋は夕ぐれのため千枚のレンズをみがく(わたしはここだ)に惹かれたが、それ以上に響く歌には出会えなかった、残念。美しいイメージを品のあるエロさで切り抜く人だなと思った。少し寝かせて、再読したい。