2月21日-3月4日

ニキの屈辱
今までの山崎作品で一番好き。ニキに自己投影してきちんと痛い目見たからかな。ただ「写真家」として見られたくてずっと気張って頑張ってきたニキを尻目に、男というだけで易々とその称号を手に入れる加賀美がずるい。いや、ずるいのは加賀美ではなく世間か。山崎作品の女性問題に敏感なところ、今回はニキという強い個性が前面にでたせいか、逆に押し付けがましくなくてよかった。
末裔
家に帰ったら玄関の鍵穴がなくなっていた、という刺激的な事象から始まる家族の話。中盤で急にこみ上げてくる懐かしさ(主人公のそれであるはずなのに充分に読み手のそれになりかわる上手さ)、結末の明るく笑える情けなさ。筋としてはなんともないのだが、非常にいい読後感だった。