2月3日-2月16日

白い兎が逃げる (光文社文庫)
火村シリーズ最新刊。四篇中ダントツなのは(いろんな意味で)なんといっても「比類のない神々しいような瞬間」でしょう。作者自ら賞味期限のあるアイディアと書いてあるように、そのオチは半ば脱力もの。確かに火村とアリスは妙にミレニアムを強調してるなぁとは思っていたが・・・。
キララ、探偵す。
ええっ?!あの竹本健治が?メイドが好き。死ぬほど好き。!? 何か落とし穴がある鬱小説なんじゃないかと疑ったりもしたけれど、紛うことなきメイド小説でした、ごちそうさま。
課外授業ようこそ先輩 12歳の大人計画
責任を回避する方法の一つとして、子供をつくってないと小学生にはっきり云えちゃう松尾スズキ、いい。本放送観たかったな。将来の自分を問うことよりも大人って何というエクスキューズの方が私が掴みたかったものに近かったことに吃驚だ。
ミーナの行進
新聞連載時に挫折したのでリベンジ。題名のとおり物語の中心は語り手・朋子ではなく喘息もちの美少女・ミーナ。もちろんミーナも素敵なのだけど、なんといっても朋子の造形が素晴らしい。思春期の硬質な気高さが地の文と響きあっていて、とても自然に物語に入っていけた。図書館でのとっくりさんとのエピソードが特に秀逸。
雨恋
可もなく不可もなく。刑事のキャラクタはいくらなんでもご都合主義では。
笑酔亭梅寿謎解噺
起承転結のはっきりしたパターン小説。横暴な落語の師匠と族あがりのモヒカンetc…と個性的な面々ですが、話はまぁありきたりかな。
クライム・マシン (晶文社ミステリ)
エキサイティング!殺ぎ落とされた文章の美しさといったら!日本にこれぐらい刺激的な短編ミステリを書ける作家、何人いるだろうか。全体を通して素晴らしいが特に「殺人哲学者」「日当22セント」「エミリーがいない」「カーデュラの逆襲」が好み。
現代の小説〈1993〉
井上ひさし「極刑」が読みたかったので。しかし事前に物語と核となる部分(意味をなさない言葉の羅列を覚えさせられる女優/ネタバレではないのだけどもそこが肝)を知っていたので面白みはなかった。もっとその設定を生かした話かと思っていたのに残念。この本の収録されている短編を読んでいえるのは、日本の現代文学の屋台骨はやはり倦怠なんだなぁということ。そしてそれをできるだけ軽く切り取ろうとする21世紀の作家たちと違い、倦みを倦みのままに描き出した収録作たちは、そういう意味でとても古臭い(特に相容れなかったのは「麦藁帽子」津村節子)。あと、今との差異は自傷がないことか。
13 (角川文庫)
これがデビュー作!ほんとに?文章もスタイルもほとんど完成してると云ってもいい。相変わらずの疾走感、確かな質感と(今作の特徴でもある)豊かな色彩。素晴らしいね古川。
日本の名随筆 (1) 花
岡野弘彦「ふしぐろせんのう」が目当てでした。幻惑される美しい文章だった。他に目を引いたのは西條八十「赤いカンナの花」,幸田文山茶花」。