12月8日-12月16日

絵描きの植田さん (新潮文庫)
ほわほわとしている、しんと冷たい、いしいしんじの文章。これは単行本を買ったほうが楽しめるでしょうね、きっと。
木洩れ日に泳ぐ魚
いまいち恩田陸っぽくないというか、彼女の筆運びの苦手なところばかりが目立ったというか。純粋に最後まで引っ張っていってくれて結末でしょぼんとしない、初期の熱気を帯びた作品はもうでないのかな。
ゴッドスター
スピードが、視点が、緩急をつけてときに暴走して、迫る。それはいえない。で断ち切られた物語の続きを、どこまでも先を、そのスピードに乗って見続けていけそうな高揚感。いい、たまんない。違和を感じた前作とどこが違うと云われても全然答えられやしないんだけど。ただ、そろそろ長編が読みたい。古川は長編の人だと思っているから。
東京・地震・たんぽぽ
東京大震災を描いた短編集。ぎゅーってなるね、ぎゅーって。どれもすごく良かったけれど、自身の選択に懊悩する「僕が選ばなかった心中、の話」、蝶の標本を手に自由へと踏み出す「ぼくのすきなもの」、死へ向かう中、ただ弟を抱きしめたいと願う「だっこ」がとくに印象的。
gift (集英社文庫)
文庫が出たので再読。上で古川は長編の人って書いたけど、この短編集は例外なの。もうすっごいよ、本当に奇跡みたいな贈り物たち。彼の文章のケレン味も疾走感も小さな発見やきらめきも、どの短編にも過不足なく入っている。大好き。
仏果を得ず
文楽って未知の世界だけれどすごく面白かった。主人公の優等生ぶりがやや鼻につくが。芸事小説ってどうしてもそうなっちゃうんだろうけど、普通の真面目な師匠ってでてこないのね、なんで?キャラが魅力的で、三浦さんの掌の上ってわかってても萌えるよこんちくしょーって感じ。兎一郎が特に素敵だ。