5月4日-5月18日

スイス時計の謎 (講談社文庫)
勝手に長編だと思ってたら短編集でした。表題作は有栖川有栖のセールスポイントをぜーんぶ取り入れたオススメの一作。
回想 回転扉の三島由紀夫 (文春新書)
ほとんど作品を読んだことがなく三島の生い立ち思想その他も全然知らないので、衆道ハァハァという邪念のみで読みました。彼が切腹フェチかつ軍事趣味であり、それが高じて割腹自殺に至ったのだなぁというシンプルな筋道を教えてくれる本でした。(調べると老いへの恐怖とか諸説あるのですね)。しかしまぁ、出会いといい二人の会話(これはむろん脚色ないし美化されているのだろうけど)といい、どこのBLだ、と云いたくなるような、そういう意味では耽美な文章でした。女の嫉妬は云々というけれど男の嫉妬だって充分アレだ。
内宇宙への旅 (徳間デュアル文庫)
作中作に仕掛けられた罠、あなたは気づきますか?という帯自体がある意味罠。倉阪らしい脱力の結末でした、合掌。
論理と感性は相反しない
連作短編集、みたいな作品群。「これが私の代表作です」とのこと。面白かったけど作品としてまとまってるとは思えない、面白かったけど。「恐怖の脅迫状」が好き。
リリイの籠
女子高連作短編集。あー上手いよなほんと。女の子同士ってほんとこんな感じ。ただ豊島さんはいっつもこんな感じで、足踏みってんじゃないけど、なんだろう、これより先の関係性は書く気ないんじゃないのかなって、ちょっと残念だなって思う、読むごとに。
決定版 太宰治全集〈6〉小説(5)
正確には読了したのは「正義と微笑」だけです。目当てだったので。実在の少年の日記を下敷きにしているということもあって、非常に青い!すごく張り切ったことを次の日には冷笑的にみてしまう、その己を御しきれていない感じがすごく懐かしくきゅんとさせます。あと随所にキリスト臭があり興味深く読んだのですが、特にモーゼが民衆の食べ物について細かく指図していることに触れて、モ−ゼは、これらの鳥獣、駱駝や駝鳥の類まで、いちいち自分で食べてためしてみたのかも知れない。駱駝は、さぞ、まづかつたであらう。さすがのモーゼも顔をしかめて、こいつはいけねえ、と言つたであらう。とコメントしているのには思わず微笑。いかにも十代男子っぽい。この伸びやかさ、屈しやすさ、そして希望へと邁進していく様はいつの時代もきらきらしていて、青春っていうのは美しいな(少なくとも文学上は)と感じ入ることしばし。太宰の皮肉屋だけど洒脱で真面目な、人を喜ばせることが好きな性分が、私は好きです。