5月21日-6月3日

あられもない祈り
島本理生のこの繰り返されるモチーフはもはやライフワークなのだろうか。道ならぬ恋、暴力、親の干渉、隠された傷。終始自覚的に振舞っている「私」が、第三者から語られた「あなた」の印象に傷つく、終盤の何気ない描写が心に痛い。息苦しくて狂おしい恋。「ナラタージュ」よりは遥かに苦い。
道徳という名の少年
ゴージャスな装丁!お話は現実的な御伽噺で、こういうけれん味と毒のあるお話が桜庭さんは本当に巧いと思う。そしてクロニクル好きだな桜庭さん、とまた思った。
ワイルド・ソウル〈上〉 (幻冬舎文庫),[isbn
4344407679:title]:戦後のアマゾン移民の2世が日本国家に一泡吹かせてやる話。垣根さんのお話、面白いし読ませるのだけど、ちょっと違和感がある。つきぬけきれてない感じがある。主人公サイドが不幸な死に方をしないという雰囲気が漂いすぎていて緊迫感が少し足りない。ただ、面白いし読ませるのは確か。
午前零時のサンドリヨン
高校が舞台、日常の謎ミステリ、ラブコメ要素あり、ヒロインはちょっと浮いてる美人、読後感はあんま爽やかじゃない。メインが明確に違うので同じ土俵に乗せるべきではないのだろうが、始終古典部シリーズ(米澤穂信)がちらちら。キャラ造形の不自然な点、後味が悪いまま放られたエピソード、最後の告白シーンで急に男前になる主人公等に違和感を感じた。あと地の文(主人公の独白の形をとっている)では「酉乃」なのに会話文では「酉乃さん」なのがどうも気になる。文章は読みやすいし伏線の張り方もきれい、構成もうまいと思うのだけど、こういう些細なことが積もるともうノイズ入っちゃって楽しめない、残念。