2月3日-2月12日

機嫌のいい犬
川上さんが俳句をやってらっしゃることをこの本で初めて知った。俳句って短すぎて感情の飛躍を読み解くのが私にはちょっと難解。でもその分、言葉は端的で怜悧。川上さんの句は全体としてまろいのだけど、やっぱり言葉はすぱっと刺さる。川上さんの言葉選びがとても好きなので本書もうっとりと堪能させていただいた。一番心に刺さったのはこれ。白シャツになりすもも食ふすもも食ふ
TYOゴシック (モンキーブックス)
短編がゆるやかに連なる連作集。冒頭の二編にまったくついてゆけなくて、ついに私の想像力が古川に追いつけなくなったと悲しんだのだが三編目「鰓で呼吸する」から急に視界が開けた。そこからは速度を増して読み進んだ。一編目で得体の知れない、気持ちの悪いものでしかなかった怪物が、九編目に至りついに形を得る。やっと会えたねという安堵感。もう一度、頭から読みたいな。