10月29日-11月11日

獣の奏者 外伝 刹那
獣の奏者番外編。エリンとイアルの馴れ初めが一編、エサル師の半生が一編。どちらも恋愛を主眼にしているのだが重く厳しい。でもその中の小さな光が、ほのかな温かさが、彼らを生かしたのだな。ほんとうにしみじみとそう思う。
野川
新刊紹介であらすじを読んだとき初期路線なのか!と色めきたった。実際は期待とは異なるものだったけれど、随分とまぁ、うん、吃驚した。赤面するほどストレートな(けれど抑制は効いた)父子の歩み寄りの物語。今作では人は非日常へと赴かない、飛ぶのは鳩だ。魅惑的なキャラクタとその無駄のない配置、含みを持たせた軽やかな会話、話の道筋、どこをとっても長野まゆみなのに、この作品は異質。はらはらしながら読み終えて、長野まゆみだったと咀嚼はしたが、なんというか、その、吃驚した。
やさぐれるには、まだ早い! (ダ・ヴィンチブックス)
エッセイ集。日記だな。ときどき感情がぶわっとなってすごくおセンチな書き方になっちゃうとことか、ちょっと混乱して書いて、よく分からないが、とか断り書き入れちゃうとことか。自分の文章にこういう部分を見つけるとがっかりするのだけど、他人のそれは好ましいな、と思いながらにこにこ読んだ。
犬の人生
詩人が書いた短編集。ファムファタルが次々と現れる「真実の愛」は笑ってしまうような半生にふっと悲しみの影のある印象的な作品。「二つの物語」の美しい結末もよかった。ちなみにこの本、翻訳が村上春樹なのだが、ものすごくハルキ的。原文ではどうなのだろうな、ちょっと気になる。
るり姉
るり姉の家族たちによるるり姉のお話。自由だけど窮屈でキュートで大人なるり姉。複数の人物の物語から一人の人物を描きだすという手法に私は滅法弱い。
バイバイ、ブラックバード
二本の紐栞と本文の合間に挟まれる星野マークに心惹かれた本だった。人生の終末に際し、五人の恋人(!)に別れを告げにいく話。(太宰の絶筆「グッドバイ」が下敷きだそうです)。六編のお話はほっこりな感じでまとめられていて、「死神の精度」を連想した。あと伏線全力回収!な伊坂さんの姿勢は短編においてはややくどいな。もちろんクオリティは水準以上、面白く読みやすいのだけど。